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その日。母の歌声が聞こえてくるはずの貴族の屋敷から、歌声が聞こえてこなかった。 不安と恐怖と共に、フォルカが母の下へと駆ける……。 『天使を解き放つ時 13』 いつも聞こえていた、母の美しい歌声が聞こえない。 「ど…どういうことだ…。」 ここへ来たのは数日ぶりだ。 その間に…母さんが…死んだのか…。 「う…うわぁああああああああーーーーーー!!」 俺は、我を忘れて貴族の屋敷へと駆け込んだ。 「誰だ!貴様は!!」 警備の兵が武器を構え、俺に襲い掛かってくる。 「邪魔だぁー!!」 俺は短剣を振るい、兵士の急所をついた。 バタン 兵士が、悲鳴を上げることもなく絶命する。 「母さん!母さん!!」 次々と現れる兵を一撃で仕留めながら、俺は走り続けた。 生きていてくれ! 俺が救い出すまで死なないでくれ!! それだけを祈り、俺は母を探した。 そして、天窓から月の光が差し込む広い部屋に出た。 壁には多くの絵画や、彫像が並べてある。 その中央。月の光が最も明るく照らしている場所に、懐かしい金の髪と、白い翼を見た。 「か…母さん!!」 母さんだ!! 母は、多くの美術品に囲まれ、一人月の光を浴びながら立っていた。 「母さん!無事だったんだね!!」 俺は母に駆け寄った。 「会いたかったよ!母さん!!」 立ち尽くす母に、俺は抱き着いた。 だが、その母は妙に冷たかった…。 (あれ…。母さんは、こんなに冷たかったっけ……?) 柔らかかった母の体は硬く、血の流れを感じない…。 抱きしめられた時に聞こえていた、鼓動の音が聞こえない!! 「か…かあ…さん…。」 俺は、恐る恐る母の瞳を見た。 深い森を感じさせた美しい緑の瞳。 キラキラ輝いて、まるで宝石のようだった。 けれど、今その瞳に輝きはない…。 母の瞳に、もう命は宿っていなかった…。 「う……そ…だろ…。」 目の前にある現実が信じられない。 「ね…ぇ…か…ぁ…さん…」 冷たい母の頬をペチっと叩いた。 『イタいわね…。フォルカ…、いたずらは駄目よ…。』 母さんなら、そう言ってくれるはずなのに…。 「どうして…何も言ってくれないのさ…。」 俺は母の足元に力なく座り込んだ…。 母さんは目を開けて、立っている…。 けど…もう生きていない…。 母さんは……………剥製にされていた!! 「う…うわぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」 そこから先の記憶はない。 覚えているのは、人の悲鳴。飛び散る血。 そして、言いようのない怒り。 気付いた時、俺はもう貴族の屋敷から出ていた。 何故か屋敷は炎上し、俺の右手には、母の金の髪が握られていた。 炎が全てを焼いていく。 母の体を。母を縛り付けていた鎖を。 火の粉を上げ、煙が天へと昇る。 母の魂は、その煙と共に自由になれただろうか。 ――いや…まだだ…。 俺の中の火消しが語りかけてくる。 ――まだ母さんは解放されていない…。 そうだ。まだ、俺は二億貯めていない。 ――まだ母さんの魂は捕らえられたままだ…。 母さんの魂は、まだ縛り付けられている。 ――解き放て…天使を… そう…。俺は殺さねばならない…。 天使を解き放つ………その時まで………。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 これが私の考えた、フォルカが金を貯めている理由です。 お金では絶対に、手に入らないもの。もう、この世から消えてしまったもの。 それを手にいれる為に、お金を貯めているのだと思います。 あと一話。フォルカの現在とこれからを示す、エピローグがあります。 『ゼルギウス将軍の一番長い日』と、少しリンクしています。 |
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うわあああああ!! |
琴里 2008/05/08 22:18 |
フォルカの行動は、謎に包まれていましたよね。 |
リリカル 2008/05/09 19:02 |
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