リリカルのまったりした図書館

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 天使を解き放つ時 11

<<   作成日時 : 2008/05/06 21:33   >>

トラックバック 0 / コメント 2

息子を助ける為、自分自身を金に替えたリュミエル。
そして別れの朝が、やって来た……。

『天使を解き放つ時 11』

 気付いた時、俺は闇医者の診療所で眠っていた。
「フォルカ…朝よ…。」
 朝の日を受け、母の金の髪がきらきらときらめく。
「母さん…。俺…どうしてこんなとこに…?」
「お前は、暫くここで療養することになった。」
 闇医者のメストルが、煙草を吹かしながら、俺にそう言った。
「療養…?金もないのに?」
「大丈夫。お金なら手に入ったわ。」
 母が笑いながら言う。

 金が手に入った?
 どうやって、そんな大金を?
 まさか…まさか!?

俺の心に不安がよぎる。

「母さん…自分を…売ったのかい?」
 何も言わず、悲しそうな笑みを浮かべ、母はこくりと頷いた。
「そんな!俺、母さんを犠牲にしてまで生きたくない!!
 母さん…止めてよ…。
 奴隷になんて…ならないで…。」

 俺は、自分の無力さに泣いた。
 父も俺を助ける為に死んだ。
 そして、母まで俺を助ける為にその身を金に換えるなんて…。
 自分の弱さに腹が立つ。 俺はなんて弱いんだろう。
 俺は、父と母に守られるだけの存在でしかないのか?

 涙を流し続ける俺を、母は優しく包み込んだ。
「フォルカ…。泣かないで…。」
 そして、額と額を重ねて言った。
「私は、フォルカのお母さんなの。
 子供の幸せの為なら、
 何だって出来るのよ…。」

 それはかつて、リュミエルがラフィエルに言われた言葉…。
(ラフィエル兄様…。
 あの時の言葉の意味が、今の私にはよく分かります…。
 愛する息子の幸せの為なら、私は何だって出来ます…。)

「う…母さ…ん…。母さん!母さん!!」
 母の綺麗な瞳には、後悔の色も恐怖の色もない。 俺を思う慈愛の色に溢れていた。
「それじゃあフォルカ…
 私はもう行くわ…。」
 俺の額にキスをし、母は立ち上がる。
「メストル先生…。息子をお願いします。」
「分かった。火消しの息子さんだ。すぐによくなりますさ。」
「待って…母さん…。」
 ベッドから下り、母を追いかけようとするも、
「ガハァッ!?」
 黒い血を吐き、歩くこともできない。
 母は、部屋から出る前にくるりと俺のほうを振り向き、にっこりと笑った。
「フォルカ……。
 幸せになるのよ…。」
 天使のような笑顔でそう言い、母は俺のもとから去って行った…。

「リュミエル様。息子さんとの別れは済みましたか。」
「はい…ドレイン様。」
 リュミエルは、ドレインの待つ馬車へと乗り込んだ。
「ありがとうございます。お陰で、息子の命は救われました。」

 夫を殺した男だ。
 心からそう思っているわけではない。
 だが、この男がフォルカの治療費を全額払ってくれたのも事実だ。

(フォルカ…元気で…)

 走り去る馬車の窓から、リュミエルはフォルカのいる診療所をずっと見ていた。
 口が自然と歌を口ずさむ。
 それは、ラフィエルが妹の幸せを願い歌った歌。
 今リュミエルは、息子の幸せを願い歌い続けた…

設定テーマ

注目テーマ 一覧

月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
予想はしていたけれど…
いざ拝読したら…やっぱり悲しいです…
リュミエルさんの心の強さ、美しさと、どうにもできないフォルカの悲しみが胸を打ちます。
でも、
>「私は、フォルカのお母さんなの。
 >子供の幸せの為なら、
 >何だって出来るのよ…。」
すごく共感です(わたしには子どもいませんが)
愛する人のためであったら、人はなんだってできると思います。
それがたとえ自分を傷つけることであっても…
あらためてドレイン、本っっっっっ当に嫌な奴!!!!!
実際にFEの敵でいてもおかしくないくらいです。
もしこういう敵がFEでいたら、もっとドラマティックになっていたでしょうね。
琴里
2008/05/06 22:05
琴里様
リュミエルのそのセリフは、今まで夫や息子に守られる存在だったリュミエルが、息子を守るだけの力を持っていたことが、表れ出て来たセリフですね。
人を想う力は、何より強いものです。
脆弱な鷺の民であったリュミエルも、愛する夫と息子への想いで、誰かを守る強さを、得ることが出来たのでしょう……。

>実際にFEの敵でいてもおかしくないくらいです。
それは嬉しいお言葉です。ありがとうございます^^
オリキャラを作るときは、ゲームで言う緑色ユニットや、名無しの敵将などをイメージして作っているので、そう言ってもらえると嬉しいです。
たとえ嫌われようとも、それだけ印象が強いということですしね。
そういえば、ゲームではこんな感じの奴隷商人は出てきませんでしたね。
蒼炎で、ゴロツキ風の商人は出て来ましたが。
もし出てきていたら、奴隷制度に関する話が、もっと深まっていたかも知れませんね。
そしてトドメは、フォルカで刺す!!と。
リリカル
2008/05/07 20:11

コメントする help

ニックネーム
本 文