|
父と母。そして俺。 静かだが、穏やかな毎日。そんな毎日が、ずっと続くと思っていた。 あの男が来るまでは………。 『天使を解き放つ時 8』 母は歌う。祝福の歌を。 俺は、父と共にその歌を聞きたかった。 そういえば、少し戻ってくるのが遅い。 「母さん。ちょっと父さんの所に行ってくる。」 「気をつけてね。」 俺は父のいる小川へと向かった。 「父さん。」 体を流す父に声をかける。だが、 「フォルカ!来るな!!」 父は俺に叫んだ。 「え…?」 突然の父の言葉に、俺はどう反応していいのか分からなかった。 それが、父の運命を決めた。 「その方が、貴方の息子さんですか?」 川向こうから、穏やかな男の声が聞こえてきた。 「逃げろーーーーー!フォルカーーーーーーーーーーー!!」 「フォルカさんですか…。私はドレイン。 奴隷商を生業としております…。 はじめまして…そして………さようなら。」 男の手から巨大な火球が現れ、俺に襲いかかる。 「う…うわぁぁあ!?」 俺の足は竦み上がり、逃げることが出来ない。 火球に焼かれる。 そう思った時だった。 ドン!! 力強い手が、俺を突き飛ばした。 「父さん!!」 火球は、俺を焼く代わりに父を焼き始める。 「ぐあぁあ…」 父は苦悶に満ちた声をあげ、川へと飛び込んだ。 父を焼いた男は、表情を変えずそれを見ている。 「ふむ…。さすが火消し…。この程度では殺せませんか…。 しかし、時間の問題のようですね。」 「父さん!しっかり!」 俺は服を脱ぎ、それで父の体を焼く炎を叩き消す。 なんとか火は消えた。 だが、父の体は全身火傷に見舞われ、どう見ても助からない状態であった。 「父さん…ごめん。 俺のせいで…。」 あの強い父がこんな状態に陥ったのは、俺の不覚のせいだ。 悔しさが涙となって出てくる。 「フォルカ…それより、今はリュミエルを連れて逃げろ…。」 父はそう言った。 「けど、父さんは…」 父はどうするのだろう。 「俺はもう助からん。 ならば、俺は最後までお前の父として生きたい。 あいつは俺が食い止める。お前と、リュミエルには指一本触れさせん。 それが、父親として俺がお前にしてやれる最後のことだ…。」 「父さん…。」 父が俺の頭に手を置いた。 「リュミエルを…頼む…。」 そう一言だけいうと、父は川向こうへと歩いて行った。 父の後を追いたかった。 しかし、それをしたら父の最期の頼みを叶えられない。 「ぐ…うわぁあーーーーーーーーーー!!」 俺は坂を駆け上がり、母の元へと向かった。 フォルスは、坂を駆ける息子の背中をしっかりとその目に焼き付けた。 まだ、人一人の命を託すには頼りない背中だ。 (だが、今は託すしかない。俺はもうリュミエルを…フォルカを守ってやることが出来ない。 だからこれからは、フォルカ。お前が家族を守っていくんだ…。) そして、フォルスはドレインのほうへと顔を向け、ナイフを構えた。 「ここは…一歩も通さんぞ…。」 「やれやれ…。困りましたね。私はただ売り物の調達に参りましただけなのに、こんな邪魔が入るなんて…。」 ドレインの掌に炎の粒子が集まる。 「通して下さい…。 お客様を待たせておりますので…。」 小さな林の中に爆音が響く。 (フォルカ…リュミ…エル…。) 火消しではない。 妻と、息子を思う一人の父親が、その日炎に消えた…。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ドレイン。この男を覚えている方はいるでしょうか? 『ゼルギウス将軍の一番長い日』に出てきました、奴隷商人のドレインです。 敵役を登場させないといけなくなりましたので、新しくオリキャラを使うのではなく、過去話ということで、既存のオリキャラを若き姿で、登場させました。 『一番長い日』と、このダラハウとフォルカの天使シリーズは、同じ世界観の物語をいうことに、なっております。 このドレインの登場が、後にフォルカとあるオリキャラを、深く結びつけることになるのです……。 |
| << 前記事(2008/04/28) | トップへ | 後記事(2008/04/30)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|
| << 前記事(2008/04/28) | トップへ | 後記事(2008/04/30)>> |