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help リーダーに追加 RSS ゼルギウス将軍の一番長い日58

<<   作成日時 : 2008/02/13 21:49   >>

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サナキを救出したゼルギウス。燃え盛る屋敷から脱出する中、サナキはゼルギウスにある
悩みを打ち明ける・・・・。

『ゼルギウス将軍の一番長い日58 英雄群舞 第24幕 〜花のワルツ〜』

 右手に剣を持ち、左手にはサナキ抱きしめゼルギウスは炎の中を進む。
 迫りくる炎を剣で切り裂き、サナキを焼こうとする炎からしっかりとサナキを守る。
 かなりの距離を歩いたが、中々外に出れそうな場所へは行けない。

 パリン!!

 熱に耐えれず窓ガラスが割れる。
「危ない!!」
 サナキの体に破片が当たらぬようしっかりと抱きしめ、その身を守る。
「お怪我はございませんか?」
「大丈夫じゃ・・・。お主が守ってくれるからの・・・。」
 周りは火の海。だが、サナキの心に不安や恐怖はなかった。
 
 私は今ゼルギウスの腕の中にいる。
 大きくて、優しいこの腕が私を守ってくれる。
 ゼルギウスの腕の中にいれば大丈夫。
 怖くない・・・。寂しくない・・・。
 ここは、世界でいちばん安全な場所・・・。

 炎の中を進みながら、サナキはゼルギウスと離れてからのことを話した。
 皆ゼルギウスの心配をしていたということ。
 冷たそうだと思っていたセネリオが意外と優しかったということ。
 自分を助けてくれた灰色の髪の男のこと。
 そして、奴隷制度のこと・・・。

「ゼルギウス、奴隷制度についてどう思う。」
「奴隷制度ですか?」
 サナキはドレインの言ったことを思い出した。
「この組織の首領が言ったのじゃ。
 奴隷が・・・自分より下に誰がいることにより、劣等感を少なくし、安心感を得る者もいると。
 奴隷制度は素晴らしいものだと・・・。」
「そのような考え方・・・私は嫌いですね。」
「私も、その考えは間違っていると思う。
 他人を蔑み心の安寧を得るなど、恥ずべき行為じゃ。
 べオクが知の民、ラグズが力の民と呼ばれるように、人にはそれぞれ良いところ、
悪いところがある。
 蔑みの心で人を見ていては、それが見えてこない。
 隣に立ったところで初めて見える。
 互いの短所を補い、長所を伸ばし合う。
 ラグズとべオクでそれが出来れば、テリウスは更なる発展を遂げよう・・・。」
 輝く瞳でサナキが語った。
 その目に炎は写っていない。
 ラグズとべオクが手を取り合うテリウスの地が写っているのだろう。

「・・・じゃが、そう思わん者のほうがまだまだ多いのじゃな・・・。
 分かっておるつもりじゃったが・・・やはりつらい・・・。」
 サナキの瞳から輝きが消える。
 先代神使ミサハがラグズ奴隷解放宣言を出して22年。
 だが、今だ帝国内から奴隷はなくならない。
 時々思うときがある。
 永遠に奴隷はなくならないのではないのだろうか。
 自分のしていることに意味はないのだろうか。
 不安になり、夜眠れないときがある。
 そんなサナキを慰めるようにゼルギウスが言った。

「サナキ様、焦らないで下さい・・・。
 ミサハ様が奴隷解放宣言を出して、まだ22年しかたっていない。
 帝国が奴隷制度を敷いていたのは、その10倍以上の年月です。
 一度出来上がったものを壊し、新しく作り直すには、それだけの年月が必要となってきます。
 まだ22年なんですよ・・・。」
「じゃが・・・。」
 そう言われても、サナキは納得できないようだった。
 早く全ての奴隷を解放したい。
 時々大神殿を訪れるトパックを見る度にそう思う。
 トパックは、ラグズ奴隷を救う為に自ら戦い、仲間を増やし、また新たに奴隷を解放する。
 そんなトパックの行動を見ていつもサナキは焦りを感じていた。
 自分のやり方では、ラグズ奴隷が救えないのではないか、と。

「サナキ様・・・。覚えておられますか。
 昔、大神殿の花壇の一つの世話を二人でしましたよね・・。」
「覚えておる。それがどうした。」
 懐かしそうに言ったゼルギウスに、サナキは少しイライラした口調で答えた。
 いきなり花壇の話などしたゼルギウスに、自分の焦燥感が伝わっていないような
気がしたのだ。
「大変でしたよね・・・。
 毎日水を与えなければ枯れてしまう。
 かといって、与えすぎては腐らせてしまう。
 風で倒れぬよう添え木で支え、虫がついたら一匹つづ取り除く。
 そして咲いた花は・・・とてもきれいでしたね・・・。」
「ああ・・・。あれほど美しい花は、後にも先にも見たことがない・・・。」
 サナキはその花を思い出した。
 庭師が育てた同じ花と比べたら、その花は小さく、か細いものだった。
 だが、諦めず花の世話をした自分の努力が花開いたのだと思うと、その花は世界で
一番美しい花に思えた。

「サナキ様が今なさろうとしていることは、花の世話と同じです。」
「花と・・・同じ?」
「はい・・・。
 22年前、ミサハ様が花の種を蒔きました。
 その種にサナキ様が水を与え続け、20年たってやっと芽を出しました。
 芽を出したのはいいけど、その芽は中々大きくなってくれません。
 けれど、焦って水を与えすぎてはいけません。
 折角出た芽が腐ってしまいます。
 大きくならないからと言って、水を与えることを止めてはいけません。
 芽は枯れ、二度と生えてはこないでしょう。
 その花が咲くのはいつになるか分かりません。
 サナキ様の代では無理かも知れない。
 ですが、サナキ様が水を与えることを諦めなかったら、サナキ様の御子が、その代でも無理だったら、またその御子が水を与え続け、
いつか花を咲かせ、テリウス中をその花で満たすでしょう・・・。
 大切なのは、焦らずに、諦めずに水を与え続けること・・・。」
「諦めずに・・・。」
「種はベグニオンだけに蒔かれたのではありません。
 クリミアではエリンシア様が、ガリアでは獅子王が、セリノスでは
鷺の王子たちが、フェニキス、キルヴァス、デイン、ゴルドアにも、その種は蒔かれています。
 皆、いつか花を見ようと水を与えています。
 サナキ様一人で水を与えているのではありませんよ。
 だから・・・無理をなさらぬよう・・・。
 私は、その花が倒されぬよう支える添え木となり、花を守りつづけましょう・・・。」
「ゼルギウスが・・・花を守ってくれるなら・・・私は安心して、水をやることが出来るな・・・。」

 ゼルギウスの言葉を聞き、サナキの顔に再び笑顔が戻ってきた。
 一人では無理でも、皆で水を与えれば花はいつか咲くことができるだろう。
 いつかゼルギウスと育てたような美しい花が。
「その花を見ずに死ぬのは惜しいな・・・。
 ゼルギウス、私は必ずその花を咲かす。
 それまで、しっかり花を支えておるのじゃぞ。」
「貴女のお望みのままに・・・・。」
「どのような花が咲くか・・・楽しみじゃのう・・・。」
 サナキは花咲くテリウスを思い描く。

 いつか、咲き誇る花の中ワルツを踊りたい・・・。
 その相手は・・・花を守り続けた添え木に務めてもらおうか・・・。

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