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help リーダーに追加 RSS ゼルギウス将軍の一番長い日53

<<   作成日時 : 2008/01/31 23:37   >>

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皇帝対闇商人の熱く激しい戦い。
そして、その戦いに観客が一人現れる・・・・・。

『ゼルギウス将軍の一番長い日53 英雄群舞 第19幕 〜炎のロンド 中編〜』

 サナキとドレイン。二人の呪文を詠唱する声が重なり合う。

『Syakunetuno Hnouyo・・・Tinosokoyoriide Wgatekiwoyakitukuse・・・』
『ボルガノン!!』

 灼熱の火球が宙でぶつかり合う。
「ぐ・・・。」
 サナキが苦しそうに顔をしかめる。
「どうやら・・・魔力は互角なようですね・・・。」
 ドレインもじっとその火球を見ている。
 お互いの魔力は均衡し、火球は二人の間でとどまり続けている。
 どちらかが気を抜いたら、火球は一気にその者を焼き尽くすだろう。
 火精が火球から溢れ出しているのが分かる。
 床が、カーテンが。火精によって少しづつ焼かれていく。
 二人の静かだが激しい戦いが始まった・・・。

 その頃、屋敷の中をフラフラと歩く一人の男がいた。
 黒装束にふわりとした灰色の髪。右手には銀の装飾が美しい折れた剣。
「くそ・・・。あばら何本かいってやがる・・・。」
 拷問官、ヴェイラである。
 ゼルギウス必殺の一撃を受けたヴェイラだったが、その剣を何とか防御したこと、
装備した鎖帷子、そしてヒットした瞬間反射的に大きく後ろに跳んだことにより、
致命傷は免れたのだ。
 道具置き場に行き、傷薬を飲んだが、完治まではいかない。
「とにかく・・・もうこんなとこからはトンズラだ・・・。
 せっかくニュクスが助けてくれたんだしな・・・。」
 折れたニュクスを悲しげに見つめる。
「ごめんな・・・オレのせいでこんなになっちまって・・・。
 早く新しい体作ってやるから・・・。
 そしたら、またあの兄さんで遊ぼうぜ・・・。
 今度は・・・負けねぇ・・・。」
 壁に手をつきながらゆっくり歩き続ける。
 だが、その手が壁から異状なほどの熱を感じた。
 まるで熱した鉄のように熱くなっている。
「うわぁっ!?」
 ヴェイラは慌てて壁から手を離した。
 その直後、ヴェイラのいる廊下の壁前面が炎に包まれた。
 何も火の気がないところから炎が上がる。
 その現象にヴェイラは覚えがあった。
「こりゃ・・・火精の暴走だ!!」

 かつてイズカの助手生活をしていた時、もう一人アシュラムという魔道士の男がイズカの
助手としていた。
 その男は魔道の研究を専門としており、よく魔道の才能のある子供を攫ってきては
強引に精霊と契約させていた。
 その結果の殆どは失敗に終わり、暴走した精霊により研究所が炎に包まれたり、
暴風により吹き飛ばされたりなどしょっちゅうのことだった。
「やべぇ!!このままじゃここいら一帯火の海だぞ!!
 早く逃げねぇと・・・。」
 そう言いつつも、体は自由に動いてくれない。
「早く・・・逃げねぇと・・・。」
 胸を押さえながら歩くヴェイラ。
 そして、真夏のような熱気に包まれた場所へとたどり着いた。
「何だありゃ・・・。」
 そこに足を踏み入れた瞬間まずヴェイラの目に飛び込んだものは、まるで太陽のように
燃え盛る火球であった。

 その火球を挟んでドレインと可愛らしい少女がにらみ合っている。
「神使様・・・。なかなかねばりますね・・。」
(神使・・・。ああ。兄さんの剣の主ね・・・。
 確か名前はサナキだっけ・・・。)
 ヴェイラはゼルギウスがサナキの名を呼んだ時のことを思い出した。 
 その名を呼ぶ時のゼルギウスの瞳はとても強い輝きに満ちていた。
(なーるほど。あの子が兄さんの想い人。
 可愛い子だけど・・・ちょーっと年離れすぎちゃいないかい。
 あと10年たったら似合いかも知んないけど・・・、今手を出したら犯罪だね、こりゃ。)
 思わずヴェイラは苦笑する。
 火球はなおも膨れあがっている。
 サナキの顔には焦りの表情が見える。
(やばいな・・・。このままじゃ神使が負ける。)
 ヴェイラはドレインの強さを知っていた。

 裏社会で生きるドレインは、それなりに命が狙われやすい。
 だが、今まで誰もドレインの命を奪うことが出来なかった。
 ドレインは火精と契約し、強大な魔力を持っていたからである。
 何度かヴェイラも見た時がある。
 自分を殺しにきた殺し屋を逆に灰にした、ドレインの姿を。

 サナキも、魔法を交えた瞬間にドレインの強さを理解した。
 今の自分の魔力では対抗できないかも知れない。
(じゃが・・・やられる訳にはいかぬ!!)
「くぉおお!!」
 全身から魔力を絞り出す。
「神使様。がんばりますねぇ。」
「私はお前を裁く!!
 人を金で取引するお前を、私は許さぬ!!」
「分かりませんね・・・。」
 ドレインが不思議そうに聞いた。
「私、今は商人などに身を落としていますが、昔は帝国貴族でした。
 代々奴隷販売で財を成す名家だったのです。
 人を売れ。人は商品にすぎない。そう教えられてきました。
 奴隷制度は帝国が生み出した最も素晴らしい制度です。
 自分より下の者がいる。そう思うことで人は安心する。
 この制度のお陰で劣等感をなくす者もいたでしょう。
 なのに、先代の神使様は奴隷制度を撤廃してしまった。
 伝統ある奴隷制度を。
 私は悲しみにくれました・・・。
 帝国の長である神使様が奴隷制度を廃したことに・・・。
 その時私は誓ったのです。
 神使様が奴隷制度を廃するなら、私はその制度を守ろうと。
 由緒ある奴隷制度の守り手として生きようと!!」
「お主は・・・。」
 この男は、奴隷がいる世界を当たり前のものだと思っている。
 奴隷を売ることに何の罪悪感もないのだろう。
 逆に正しい行為だと思っているのだ。人を売ることが!
「やはりお前に人の言葉は通じんようじゃ!
 貴様は最早人ではない!!
 人をモノとしか見ないお主も、ただのモノでしかない!!
 覚悟せよ!!貴様はこの神使にしてベグニオン帝国皇帝たる私が裁く!!」

 サナキはありったけの魔力を手に集中する。
 少しづつ、少しづつ火球がドレインのほうへと向かっていく。
(く・・・押されてきましたか・・・。)
 少々焦りつつも、ドレインの表情にはまだ余裕があった。
(いくら魔力が強力とはいえ、あなたはまだ子供なのですよ・・。
 その精神を揺らしてしまえば、立場は逆転しましょう・・。)
「神使様・・・。あなたは奴隷制度に反対なようですね・・・。」
 ドレインが聞いた。
「当たり前じゃ!!奴隷制度など、あってはならんものじゃ!!」
 サナキの魔力がまた高まり、火球をドレインのほうへ押す。
「ならば、ゼルギウス将軍を解放してあげませんと。」
「ゼ・・・ゼルギウスを解放じゃと・・・。」
 なぜここで、ゼルギウスの名前が出てくるのかサナキには分からなかった。
「ペルシス公に親衛隊の隊長殿。
 全て神使であるあなたに仕える奴隷です。
 もちろんゼルギウス将軍もですよ。」
「奴隷・・・皆が私の奴隷じゃと・・・。」
 サナキの手がふるふると震える。

「ええ。忠義という名の鎖に縛りつけられた、哀れな奴隷です。」

 その能面のような笑顔で、ドレインは言った。

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