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help リーダーに追加 RSS ゼルギウス将軍の一番長い日47

<<   作成日時 : 2008/01/22 21:58   >>

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ガリアの獅子王候補であったオウラの求めるもの・・・・それは・・・・・。

『ゼルギウス将軍の一番長い日 英雄群舞 第13幕 〜獅子の悲しき二重奏 中編〜』

『ドコダドコダドコダドコダ。
 オマエハドコニイル。アイタイアイタイアイタイ』
「オウラ!誰に会いたいの!!」


「オウラ!またベグニオンに行くのか!」
 赤い髪をした友人。スクリミルが不機嫌な顔をして聞いてきた。
「ああ。いけなかっただろうか?」
「貴様!自分が時期獅子王候補だという自覚があるのか!
 今は他にやるべきことが山ほどあるだろ!」
「獅子王候補か・・・。本当に私などでいいのだろうか?
 私は、解放奴隷として10年前にガリアに来たばかりだ。
 そんな私が候補など・・・。」
「いいに決まっているだろ。
 お前は、たった10年でガリアでも屈指の戦士となったのだぞ。
 この俺とまともに戦える者など、叔父上にジフカ殿、そしてオウラ、お前だけだ。
 もっと自信を持て。お前は王になる資格が充分ある。」
 自分と王の座を争う私を励ますスクリミル。
 この気のいい友人のことが、私は大好きだった。
「ありがとう。
 でも、私はベグニオンでやらなければならないことがあるんだ。」 
 そう。10年前のあの日にやれなかったこと。
 それを果たす為に、この10年何回もガリアとベグニオンを往復してきた。
「行かせてやれよ、スクリミル。」
「しかしライ!」 
 ライがスクリミルの肩に手をぽんと置く。
「オウラのベグニオン行きなんて、しゅっちゅうのことだろ?
 別に王を決める時のマイナスにゃならないさ。心配すんなって。」
「それならいいんだが・・・。」
 そう言いつつも、やはり不満気な顔をしている。
「スクリミル、私の印象が悪くならないか心配してくれるのか?」
「当たり前だ!!
 俺とお前!王の座を争う者同士の決着は、それにふさわしいものでなければならん!
 つまらんことでお前が候補からはずれるなど許さんからな!」
 剛毅な性格のスクリミルらしい言葉だ。
「分かった。帰ってきたら決着をつけよう。
 私とスクリミル。どちらが獅子王たるにふさわしいか。」
 スクリミルに手を差し出す。
「おう!約束だぞ!!」
 がしっと手を握り合う。

『ドコダドコダドコダドコダドコダ。』

「オウラさーん!」
 王宮を出ようとして、また私は声を呼びとめられた。
 長い銀髪を揺らしながら獅子の少年がやってきた。
「レグルス。」
 帝国で奴隷をしていた時から生活を共にしてきた大事な弟分だ。
「オウラさん。ベグニオンに行くんですよね。
 僕も一緒に連れて行って下さい。」
「駄目だ。ガリアで待っていろ。
 昔ほどではないとはいえ、帝国ではまだラグズ奴隷捕獲が密かに行われている。
 お前みたいに毛色の珍しい獅子はいい的だ。危険すぎる。」
「僕だって、自分の身ぐらい自分で守れます。
 連れてって下さい。」
「そう言っているうちは、まだまだ未熟な証拠だ。
 レテにもう少し鍛えてもらえ。」
 レグルスは悔しそうな顔をしたが、はいと頷いた。
「分かりました・・・。
 帰ってきたら、訓練付けて下さいね。約束ですよ。」
「ああ。お前がどれだけ強くなったか楽しみにしてるよ。」
 レグルスの銀色の頭をごしごしと撫でる。
「行ってらっしゃい!オウラさーん!」
 私の背中に向けレグルスが言う。
「今度は、絶対僕を連れてって下さいねー!
 僕も、ローザリアさん探したいんですからー!!」
 振り向かず手だけををあげ答える。
「帰ってくる時はローザと一緒だ。
 残念だが、次はないよー!!」

『サガシニキタサガシニキタサガシニキタ』

 帝国内に入った私は、微かにだが懐かしいローザの匂いを感じ取った。
 私は急いで匂いのする場所へと向かった。
 だが、そこにローザは居なかった。
 黄色い石の欠片が落ちている。
 化身の石だ。
 誰かラグズが使ったのだろうか。
 その近くに、見覚えのある皮の紐が落ちていた。
 それは、かつて私がローザに渡した首飾りに使ったものだった。
(なぜこれが落ちている。
 なぜ飾りに使った化身の石が砕けている。
 化身の石はラグズしか使えないんだぞ。)
 10年間考えないようにしてきた最悪の結果が頭に浮かぶ。
(ローザ・・・もしかしたら・・・)
 そのとき、何かが風を切る音がした。

 ヒュッ!!

「くぁっ!?」
 肩に矢が刺さっている。
 いつの間にか、私のまわりを武装したべオクが包囲していた。
「くそ!!」
 化身をしようとしたが、ローザのことで心が乱れ精神の集中が出来ず化身ができない。
「獅子だぞ!」
「褐色か・・・毛色は珍しいのじゃないな。」
「けど、獅子自体貴重なんだ。高く売れるぞ。」
 矢が次々と放たれる。
 化身をしていないラグズほど弱いものはない。
 私は網をかけられ、あっけなく密売人どもに捕らえられた。

『オマエハシンダノカシンダノカシンダノカ』

 薄汚い小屋に放り込まれた私に、やつらは無理やり妙な薬を飲ませた。

 ドクン!

 体中の血が逆流するような感覚に襲われ、自分が意識していないのに化身をしてしまった。
(もしや・・・やつら『なりそこない』の薬飲ませたのか・・・)
 頭の中から、私の大事な記憶が消えていく。

 奴隷生活の苦しみ。
 奴隷から解放された時の喜び。
 ガリアの美しく深い森。
 私を兄のように慕ってくれたレグルス。
 明るく友人思いなライ。
 剛毅で気のいいスクリミル。
 全ての記憶が消えていく。

(ローザ・・・お前のことだけは・・・)

 奴隷から解放されたばかりの時、べオクを毛嫌いしていた私にも優しく接してくれたローザ。
 いくら冷たくしても優しく笑っていた。
 いつの間にか、好きになっていた。
 少しでもその気持ちを伝えたくて渡した首飾り。
 けど、ローザは鈍感で気づいてくれなかった。
 だから言おうとした。

(お前のことを忘れたくない・・・。
 誰か・・・私を殺してくれ・・・。
 大事な仲間の記憶を忘れ、ローザのことを忘れ、なりそこないになどなりたくない。
 殺してくれ・・・。)
 その時小屋の扉が開き、きれいな金の髪が見えた。

「ねぇ!助けにきたよ!!」

 獅子の少年。レグルスと同じぐらいだろうか。
 どこかローザに似ているような気がする。
「お前・・・獣牙の民か・・・。」
「うん!ロッタだよ!!」

 ロッタ。
 いつかローザが話した亡くなったという弟と同じ名だ。
 これも何かの縁なのだろうか。

「小さき同胞よ・・・。頼みがある・・・。
 私を・・・殺してくれ・・・。」

 すまない。
 レグルスと同じぐらいの君にこんなことを頼んでしまって。
 ロッタはそれを拒んだ。

「早く・・・でないと・・・私がお前を殺してしまう・・・。」
 私の体が化身の光に包まれる。
「若き獅子よ・・・。早く殺してくれ・・・。
『なりそこない』などになって死にたくない・・・。」

 記憶が消えていく。
 友と交わした約束が。
 弟と交わした約束が。
 ローザに言おうとした言葉が。
 全てが消えていく。

「もう・・・もたない・・。」

 友の名が消える。
 弟の名が消える。
 愛する人の名が消える。
 だが、自分の名だけは忘れたくない。
 愛する人が呼んでくれた名前だから。
 その人が私の名を呼ぶだけで、私は幸せになれた。

『オウラ。話ってなに?』

 そう言って、私の目の前から消えた愛する人。
 この名を忘れたくない。
 誰かに覚えておいてほしい。
「ロッタよ・・・。覚えておいてくれ・・。
 我が名は・・・オウラ・・・。
 ガリアの・・・オウラ・・・。」
 覚えていてくれ・・・愛する人が呼んでくれた名を・・・。

「ロッタ・・・。あの人の言葉が分かるの・・・?」
 サーシャがロッタに聞いた。
「全部は分からない・・・。
 けど、オウラは誰か大事な人を探しに来たんだ。」
「そして・・・捕まってしまったのですね・・・。」
 エリンシアが辛そうに言った。
「グルァオオオオ!!」
 その誰かに呼びかけるようにオウラは吼え続ける。
 悲しいオウラの咆哮がロッタの胸を締め付ける。
(オウラ・・・。その人の名前も忘れちゃったんだね・・・。
 でも、逢いたいって気持ちは忘れなかったんだね・・。)

『アイタイアイタイアイタイアイタイ』

 可哀相なオウラ。
 悲しいオウラ。
(大事な人の名前を忘れてしまうなんて・・・。)
 ロッタは、自分にしがみついていたサーシャを引き離した。
「ロッタ?」
「サーシャ・・・。オレ、行ってくる・・・。」
「いいの・・・?オウラさんを・・・殺すことになるのよ・・・。」
「殺すんじゃない・・・。救うんだ・・・。
 大事な人の名前を忘れた・・・悲しみから・・・。」
 オウラの元へ向かおうとするロッタの手を、サーシャが握った。
「サーシャ・・・。」
 怖かった。
 いくらロッタが獅子だと言っても、オウラも獅子なのだ。
 しかも、獅子王候補となるほどの強者。
 ロッタが死んでしまうかも知れない。
 一緒に逃げたかった。
 けれど、悲しい獅子も救ってほしかった。
「ロッタ・・・。オウラさんを・・・たすけてあげて・・・。
 ロッタも・・・死なないで・・・。」
 サーシャは、自分の無力さを呪った。
 大事な友達が戦おうとしてるのに、励ますしか出来ない自分が悔しかった。
 せめて自分の思いがロッタを守るようにと、ぎゅっと手を握る。
「うん!分かった!!」
 そう言い、化身の光を輝かせながら金の獅子は褐色の獅子へと挑んで行く。
(私が出来ることは・・・この戦いから目を逸らさないこと・・・。
 死んでも・・・見続けてやる・・・。)
 サーシャは、その蒼い瞳でしっかりと獅子の戦いの結末を見る決意をした・・・。

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